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令和6年度広島県公立高校入試国語:大問2解説

広島国語屋本舗 現古館、館長の小林です。

 

それでは、令和6年度広島県公立高校入試国語大問2の解説を始めていきましょう。

大問2解説

もうお腹いっぱいと言いたくなりますが、環境がテーマの文章です。

 

気候変動適応情報プラットフォームウェブページからの引用というのは目新しくはありましたね。

 

漢字の読み書きの問題は大問1に吸収されていますから、まずは脱語補充の問題から。

 

生物の【 a 】が環境条件にうまくあっていることを、「生物が環境に適応している」といいます。

 

特徴、特質、性質、このあたりの語しか文脈にそぐわないわけで、直前に「性質」という言葉が連呼されているわけですからね…。

 

何をしたい問題なのかはよくわかりませんが、しっかり合わせておきましょう。

 

接続詞の問題は、いつも通り前後の文脈を整理しておけば一撃です。

 

空欄bの前では、気候変動が生物の絶滅を招きうる、という内容が書かれています。

 

そして空欄bの後ろでは、「気候変動が常に生物の絶滅をもたらすわけではありません」と書かれているわけですから、逆接以外は入りようがありませんので、「イ:しかし」を選びましょう。

 

しばらく読み進めて空欄c、これは脱文補充問題ですね。

 

新傾向の問題ですが、一般的な空所補充問題と解答プロセスは同じです。

 

空所の前後の内容をおさえ、入るべき内容を想定したうえで、選択肢の吟味に入りましょう。

 

まず、空欄cの前では、世代時間が短い生物は進化の速度が速いため気候変動に対応しやすい、世代時間が長い生物は進化の速度が遅いため気候変動に対応しにくい、という内容が書かれています。

 

そして空欄cの後ろでは、「気候変動という急流に流されずに存続するのは容易ではないのです」と書かれています。

 

この内容に矛盾しない内容を選択肢から探すわけですが、さすがに誤答肢はわかりやすく作られていましたね。

 

ア:「進化の速度が気候変動の速度よりも緩やかであれば、絶滅を避けることができるかもしれませんが、」

 

→「進化の速度が遅いため気候変動に対応しにくい」という内容と矛盾します。×

 

イ:「気候変動によって世代時間が短くなり、それが要因となり絶滅します」

 

→「世代時間が短い生物は進化の速度が速いため気候変動に対応しやすい」という内容と矛盾します。×

 

エ:「生物の世代時間が長ければ~絶滅せずに」

 

→「世代時間が長い生物は進化の速度が遅いため気候変動に対応しにくい」という内容と矛盾します。×

 

空欄cの前の内容とズレのない選択肢を探すだけで解答はだとわかります。

 

問4は解答速報でも扱いましたが、八十字という記述字数にひるまずいきましょう。

 

傍線部①「気候変動は地球の生態系の姿を大きく変える可能性」があるのはなぜかを説明する問題です。

 

「気候変動」が「生態系」にどのように作用するのか、「生態系の姿を大きく変える」とは具体的にどのようになることか、この2点を説明する必要がありますね。

 

傍線部①の直前には「たとえば~」で始まる具体例が示される段落があります。

 

具体例というのは主張の補強ですから、何が筆者の主張なのかを見つける必要があるわけです。

 

すると、「たとえば~」の段落の直前に、「気候変動に伴って生物の分布や性質が変化すると、その生物と関係して暮らしていた他種の生物も影響を受けます。それは時には絶滅をもたらすほどの効果をもつこともあります」と書かれています。

 

気候が変動する→生物の分布や性質が変化する→他種の生物にも影響を与える

 

解答の枠組みが決まりました。

 

あとは、「生態系の姿を大きく変える」を具体化してあげるわけですが、「影響がある」という説明では弱すぎますし、八十字という指定字数に遠く及びません。

 

ですから、「絶滅」というキーワードを入れたり、その後に描かれている「衰退」というキーワードを入れたりして、「生態系の姿が変わる可能性」を示してあげる必要があるわけですね。

 

ここまで踏み込めて完答ということになりますが、「影響がある」という説明で終わっていたとしても、恐らく部分点はもらえるはずです。

 

私が書くなら、「①気候変動に伴って生物の分布や性質が変化することで、②その生物が変化するだけにとどまらず、③その生物と関わりをもつ他種の生物の衰退や絶滅までもたらしうるから。」ぐらいの書き方になります。

 

模範解答に②の要素はないわけですが、「その生物と関わりをもつ他種の生物」だけに焦点を当てて「生態系の姿の変化」を説明することに違和感がありまして…。

 

「その生物」の分布や性質が変化することそのものも「生態系の変化」ですよ、ということを強調したいわけです。

 

これはただの私のこだわりなので、読み飛ばしていただいて結構です。

 

さて、問5。

 

これはとてもスマートな問題です。

 

特に空欄Ⅰの書き抜き問題、これはとても勉強になるのでしっかり復習しておいてもらいたいと思います。

 

本文で筆者が述べている分布域の変化、順応、進化という( Ⅰ )の一つの具体的な事例として捉えることができるよね。

 

変化・順応・進化を抽象化した内容が空欄Ⅰに入るわけですが、分布・順応・進化について書かれている段落はどこでしょうか?

 

第3段落~第6段落ですよね。

 

第4段落は「分布」についての詳しい説明、第5段落は「順応」についての詳しい説明、第6段落は「進化」についての詳しい説明となっており、すべて「具体的」な内容です。

 

では、探すべき段落は第3段落のみ、ということになりますね。

 

すると、「環境の変化に対する生物の反応は主に三つに分けられます。」という表現は一瞬で見つかるわけです。

 

具体・抽象関係を区別して読み進めている人なら一瞬で解答を導ける、それができていない人でも問題文で探す範囲が指定されているので、探せば解答にたどり着ける。

 

得点に差こそ出なくても、使える時間に差が出るという意味で、非常に良い問題だと感じました。

 

ただ、範囲指定があることで易しくなりすぎているので、これはなくても良かったのかな…と。

 

平均点を調整するうえで仕方ないことではあると思うんですがね。

 

空欄Ⅱへの空所補充問題も新傾向です。

 

仮説の検証に必要なデータを選ぶ問題ですが、教科書内容を踏まえた面白い問題ですよね。

 

「魚の小型化は乱獲によるものではなく、海水温の上昇に原因がある」という仮説を裏付けるデータを選ぶわけですが、これ、記述問題だともう少し面白くなったと思います。

 

選択肢だと流石に易しいのかな、と思うのですが、これは夏前に出る設問ごとの正答率のデータを待ちましょう。

 

ア:「乱獲された時期に関係して、魚が小型化していることを示すデータと」

 

→これがあると「海水温の上昇だけが小型化の原因だ」と言えませんよね。×

 

ウ:「乱獲された~データと」

 

→後半を読む必要はありません。前半部分だけで、アと同じ理由で切れます。×

 

エ:「乱獲された時期と海水温の上昇どちらにも関係なく」

 

→「海水温の上昇による小型化」が言えなくなりますよね。×

 

解答はですね。

 

 

新傾向の問題がいくらか見られましたが、作問意図のはっきりした問題が多く、学びのある大問になっていたと思います。

 

難度的には、若干易化したと言えます。